今回は、復路8区の難関として知られる「遊行寺の坂」に焦点を当てて、詳しく解説していきたいと思います。
箱根駅伝の醍醐味の一つは、各区間に存在する難所です。
その中でも、復路8区の終盤に待ち構える遊行寺の坂は、レース全体の流れを大きく左右する重要なポイント
として知られています。この坂での攻防が、チームの順位を大きく変える可能性を秘めているのです。
8区の概要
まずは、8区全体の特徴を押さえておきましょう。
- 距離：21.4km
- スタート地点：平塚中継所
- ゴール地点：戸塚中継所
- 主な特徴：前半は平坦、後半にアップダウン
8区は、復路の中でも重要な位置づけにある区間です。
往路で付いた差を縮めるチャンス、あるいは逆に追い上げられるリスクがある区間とも言えるでしょう。
遊行寺の坂の基本情報
では、本題の遊行寺の坂について、基本的な情報をまとめてみましょう。
- 位置：8区の終盤、残り約5km地点
- 距離：約800m
- 標高差：約30m
- 最大勾配：約10%
遊行寺の坂は、その名の通り遊行寺（藤沢市）の近くに位置しています。
距離はそれほど長くありませんが、8区の終盤に位置することと、急な勾配が特徴的です。
遊行寺の坂の難しさ
遊行寺の坂が難所とされる理由はいくつかあります。
- 位置
8区の終盤、残り5km地点に位置しているため、選手の疲労がピークに達している頃に現れます。 - 勾配
最大で10%を超える急勾配は、疲れ切った脚にとって大きな負担となります。 - 気温
8区は午後の時間帯を走ることが多く、気温が上昇している可能性が高いです。
暑さも選手の体力を奪う要因となります。 - 心理的プレッシャー
この坂を上り切れば、あとはほぼ平坦な道のりです。
そのため、ここで踏ん張るか、失速するかが勝負の分かれ目となる可能性が高いのです。
遊行寺の坂の攻略法
では、選手たちはこの難所をどのように攻略すべきでしょうか。
- ペース配分
8区全体のペース配分を考え、遊行寺の坂に到達するまでに極端な疲労を溜めないことが重要です。 - 心理的準備
坂の存在を事前に把握し、心の準備をしておくことで、実際に坂に差し掛かった時のショックを軽減
できます。 - フォームの調整
上り坂では、やや前傾姿勢を取り、歩幅を小さくして回転数を上げるのが効果的です。 - 視線の使い方
坂の頂上を見つめると心理的に辛くなるため、5~10m先の地面を見ながら走ることで、少しずつ登って
いく感覚を持つことができます。 - 呼吸のコントロール
上り坂では酸素需要が増すため、深い呼吸を心がけることが大切です。
過去の名場面
遊行寺の坂では、これまでも数々のドラマが生まれてきました。
いくつかの印象的な場面を振り返ってみましょう。
- 1997年（第73回大会）
山梨学院大学の古田哲弘選手が、この区間で1時間04分05秒という驚異的な区間新記録を樹立しました。
この記録は22年間も破られることがなく、箱根駅伝史上最も長く残った区間記録となりました。 - 2019年（第95回大会）
東海大学の小松陽平選手が、古田選手の記録を22年ぶりに更新する1時間03分45秒をマークしました。 - 2024年（第100回大会）
※具体的な記録は2025年1月時点では未定ですが、記念すべき100回大会でも、きっと印象的な走りが
見られたことでしょう。
これらの名場面は、遊行寺の坂がいかに重要なポイントであるかを物語っています。
2025年大会の展望
さて、2025年の第101回大会では、遊行寺の坂でどのようなドラマが生まれるでしょうか。
現時点での有力校や注目選手の情報を基に、いくつかの可能性を考えてみましょう。
- 青山学院大学
前回大会で8区を走った塩出選手（4年）が、再び8区を任されるかもしれません。
前回の経験を活かし、さらなる好記録を狙えるでしょう。 - 駒澤大学
2年生ながら主力として期待される安原選手が8区に登録されています。若手の台頭が期待されます。 - 国学院大学
前々回10区で3人抜きの快走を見せた佐藤選手（4年）が名を連ねています。
経験を活かした走りが期待できるでしょう。
これらの選手たちが、遊行寺の坂でどのような走りを見せるのか、非常に楽しみです。
遊行寺の坂の周辺情報
遊行寺の坂は、単なる難所というだけでなく、歴史的にも興味深い場所です。
ここで少し、遊行寺とその周辺について触れてみましょう。
遊行寺は正式名称を「藤澤山無量光院清浄光寺」といい、時宗の総本山です。
1325年に創建されたこの寺は、江戸時代には参勤交代の大名の宿泊所としても使われ、明治天皇も宿泊した
ことがあるそうです。
また、遊行寺は東海道藤沢宿の中心として、藤沢の発展に大きく貢献してきました。
箱根駅伝のコースとなっている国道1号線（旧東海道）は、まさにこの歴史ある街道そのものなのです。
選手たちは、このような歴史の重みを背負いながら、遊行寺の坂を駆け上がっていくのです。
観戦のポイント
実際に現地で観戦する方のために、いくつかのポイントをお伝えしましょう。
- 観戦場所
遊行寺の坂は人気の観戦スポットなので、早めに場所を確保することをおすすめします。
坂の途中よりも、坂下や坂上の方が選手の表情や走りをよく観察できるでしょう。 - 時間帯
8区の選手たちが遊行寺の坂を通過するのは、例年だと午後2時から3時頃です。
ただし、レースの展開によって前後する可能性があるので、余裕を持って到着しましょう。 - 準備物
日差しが強くなる可能性があるので、帽子や日傘、飲み物を忘れずに。
また、長時間の立ち見になる可能性が高いので、疲れにくい靴を選びましょう。 - マナー
道路脇からの応援になるので、車の通行の妨げにならないよう注意が必要です。
また、選手の集中を乱すような過度な声援は控えましょう。 - 選手の観察
単に通過するのを待つだけでなく、坂に差し掛かる前の選手の表情や走り方、そして坂を上り切った
後の変化にも注目してみてください。選手の頑張りがより一層伝わってくるはずです。
テレビ観戦のポイント
テレビで観戦する方にも、いくつかのポイントをお伝えしましょう。
- カメラアングル
遊行寺の坂では、坂下からのローアングル、坂上からのハイアングル、そして選手に並走するカメラなど、様々なアングルで中継されます。それぞれの角度から、選手の表情や走りの違いを観察してみてください。 - 実況・解説
経験豊富な実況・解説陣の言葉に耳を傾けてみましょう。
選手の表情や走り方から、現在の状態や戦略を読み解いてくれるはずです。 - データ表示
画面に表示される選手のペースや区間順位などのデータにも注目です。
特に、遊行寺の坂の前後でペースがどう変化するかは興味深いポイントです。 - チーム戦略
8区は各チームのエース級が走ることも多いです。
チーム全体の戦略の中でこの区間をどう位置づけているのかを考えながら観戦するのも面白いでしょう。
遊行寺の坂が与える影響
遊行寺の坂は、単に8区だけでなく、レース全体に大きな影響を与える可能性があります。
- チーム順位への影響
ここでの追い上げや失速が、チームの最終順位を左右することもあります。
特に、シード権争いをしているチームにとっては重要なポイントとなります。 - 9区・10区への影響
遊行寺の坂での消耗が、後続の9区・10区の走りにも影響を与えます。
ここでオーバーペースになると、チーム全体の失速につながる可能性もあるのです。 - 翌年の戦略への影響
遊行寺の坂での結果は、翌年のチーム編成や戦略にも影響を与えるでしょう。
ここでの成功や失敗が、チームの長期的な方針を決める一因となることもあります。
選手の声
過去に遊行寺の坂を経験した選手たちは、どのような感想を持っているのでしょうか。
いくつかの声を紹介します。
- 「最後の難関だと思って挑んだが、想像以上にきつかった。
でも、応援の声に背中を押されて何とか上り切れた。」 - 「坂下から頂上が見えた時は正直心が折れそうになった。
でも、一歩一歩進むしかないと自分に言い聞かせて走った。」 - 「事前に何度も下見をしていたおかげで、心理的な準備ができていた。それが功を奏したと思う。」
- 「坂を上り切った後の平坦な道のりが、こんなにも楽に感じたことはない。
あの坂をクリアした達成感は何物にも代えがたい。」
これらの声からも、遊行寺の坂が選手たちに与える影響の大きさが伝わってきます。
コーチの戦略
チームを率いるコーチたちはこの遊行寺の坂をどのように捉えどのような戦略を立てているのでしょうか。
- 選手選考
遊行寺の坂を含む8区には、上り坂に強い選手や、後半の粘りがある選手を起用する傾向があります。 - ペース配分
8区全体のペース配分を綿密に計算し、遊行寺の坂で失速しないよう指示を出します。 - 事前練習
可能な限り現地で下見や練習を行い、選手に坂の感覚を体得させます。 - 心理面のサポート
遊行寺の坂の重要性を選手に説明し、心理的な準備をさせます。同時に、過度のプレッシャーにならない
ようケアも行います。 - チーム戦略との連携
8区だけでなく、前後の区間との連携を考慮した戦略を立てます。例えば、7区で少し余裕を持たせて8区
に臨むなどの工夫をすることもあります。
今後の展望
箱根駅伝は毎年進化を続けており、遊行寺の坂の攻略法も年々洗練されていくことでしょう。
今後、どのような変化が起こる可能性があるでしょうか。
